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性格を知って、活かして、霊性の向上に振り向ける

優良図書の推薦 : 『エニアグラム 人生を変える9つのタイプ活用法』 ドン・リチャード・リソ、ラス・ハドソン著 (上下2巻)

 

エニアグラムを知れば、自己の性格タイプと心の動きが解る

エニアグラム
ドン・リチャード・リソ、ラス・ハドソンの共著からなる『エニアグラム 人生を変える9つのタイプ活用法』(角川書店刊)を、「光の道」をめざす方へのガイドブックとして推奨します。
 
特に、心の葛藤や、平静さや意志力を保つことについて悩まれている方には、 ぜひとも手にし、活用していただきたい、これは稀に見る良書だと言えます。
 
ご自分の性格の善くない面について悩み、なんとかしたいと思っておられる方はきっと多くおられるでしょう。本書では、そうした性格を丸ごと肯定した上で、性格の違いというものがどこから発生し、それがどのような意味を持っているのかを明らかにします。
 
その構造とメカニズムを俯瞰的に捉えてしまえば、いたずらに悩んだり翻弄されたりすることなく、ご自分の性格を活かして善い方向に振り向け、さらには霊性の向上までも図ることが出来るのです。読みこなすにはいささか知力を必要としますが、文章はこなれており、翻訳も適切です。 本書はきっと、あなたのよきガイドブックとなってくれることでしょう。
 

『虹の学校』に欠けていたパーソナリティへの配慮を代行してくれる本

『虹の学校』では、瞑想と、フィジカル・トレーニングと、「宇宙の法則」についての学習を、毎日のエクササイズの3本柱と捉え、これまでその普及のための活動をささやかながら行ってきました。
 
しかしながら、そもそもこの道に入ろうという考えを持った人が極めて少なく、また入られたとしても、行(Exercise) に取り組めない、取り組んでも継続ができない、すぐに元の世界に戻っていってしまう、という方が大半であることをずっと残念に思っておりました。
 
先ず、関心を持たれないことの理由としては、そんな現実離れしたことにいくら時間を割いても、役に立たないし時間のムダだと思われていることです。それよりは、何か現実的なスキルを磨くことに投資したり、情報を得たりするほうがずっとよい、と大多数の人が思っておられるのです。
 
しかしそれは、私たちから見れば、まさに眠った状態にあるのです。実際にはまったく逆で、「光の道」をどんどん歩んで行きますと、世の中に対する洞察力が増し、余計な情報に振り回されることが無くなります。また、集中力が高まるために、以前よりも遥かに高度な技能を習得できるだけでなく、知性も驚くような発達を見せるようになるのです。
 
一方で、スピリチュアルな情報を、まるでつまみ食いをするようにして、あちこち行脚(あんぎゃ)しておられる方たちも大勢いらっしゃいます。しかしはっきり申し上げて、ただ情報を得ているだけでは、自分の霊性を磨くことは出来ません。なぜなら、「光の道」を歩んでいった際の成長とは、意識的、また身体的な「感覚の変化」を伴うものだからです。「感覚」が変化してしまうので、「情報」に関する見方も変わってしまうというわけです。
 
こうした自己の「変容」を、多くの人が潜在的には望みながら、もう一方ではそれと同じくらいの怖れを抱いています。なぜかと言うと、「変容」することによって、それまでに築き上げて来たアイデンティティが崩壊してしまうのではないかという恐怖心が、根っこのところから湧き上がってくるからです。しかし私たちから見れば、これは本当の自分というものを知らないし、知ろうとしない残念な態度に映ってしまうのです。
 
このようなことがあって、今の『虹の学校』のプログラムには何かが足りない、という思いをこれまでずっと抱き続けて来ました。しかし、本書に出会って、それはパーソナリティへの配慮だったと改めて気づかされました。『虹の学校』で語られている言葉は、普遍的な「宇宙の真理」を追いかけているものが主となっています。そのため、パーソナリティへの対応というものが考慮されていません。
 
そうしますと、同じ言葉やアドバイスであっても、ある人にとっては有効であるけれども、他の人にとってはあまりそうでもない、ということが往々にして起きてきます。
 
一般に、霊性向上の取り組みにおいては、パーソナリティへの配慮は、もっぱら占術や、霊視や、個人カウンセリングなどを通して行われて来ました。しかし、『虹の学校』ではそうしたものをいっさい行っておりません。決してそれらの意義を認めないというわけではないのですが、『虹の学校』の役割は、あくまで「本質」を伝えることだという使命感があったので、的をそこに絞り、よそ見することを避けたのです。
 
エニアグラム

鈴木秀子さんの著書(1998年)

しかし依然として、パーソナリティへの配慮が欠けているという問題がありましたので、どうにかならないものかなと考えていたところ、ここに推奨する本と出会ったというわけです。
 
「エニアグラム」そのものには随分と以前に接し、興味を掻き立てられたことがあって、グルジエフのことも研究していました。当時、私が読んだ本は、鈴木秀子さんが紹介されたものだったのですが、これは「エニアグラム」による性格診断法の初期の開発者だったオスカー・イチャーソやクラウディオ・ナランホの著作をベースにしたものであったと思います。
 
「エニアグラム」に触れて、私はその価値をすぐに認識しましたが、どうしても腑に落ちないといいますか、釈然としない部分があり、なんとか活用したいと思いつつも、その後10年以上もそのままにしておりました。ところが、2021年の10月 に突如としてインスピレーションを受け、腑に落ちなかった部分の解答が得られました。そして、それを精緻化しようとして改めて調べていたところ、「エニアグラム」に関する本がその後もたくさん出ている事実を知りました。
 
そこで試しにと思い、表題の書籍を購入して読んでみたところ非常に驚かされたのです。オスカー・イチャーソ、クラウディオ・ナランホはすでに故人となっていますが、その後も「エニアグラム」の研究開発をする才人が登場し、「エニアグラム」は初期の頃よりも 遥かにパワーアップしたツールとなっていたのです。
 
ということで、私が「エニアグラム」の活用法を云々するよりも、ここに紹介した本を直に購入して活用していただいたほうがずっと手っ取り早く、かつ有意義であると考えるに至りました。またこれによって、長年の懸案であったパーソナリティへの配慮の問題が一挙に解決する目処も立ったのです。本書は、それほど革新的なものを持っています。
 
以下に、「エニアグラム」とはいかなるものかということと、本書ならではの革新的な部分を紹介しましたので、ご興味のある方は下記解説をご一読のうえ、ぜひ取り組んでみてください。また、本書では言及されていない、私が得たインスピレーションの部分も併せてここに記載しておきます。「エニアグラム」への入り口としてどうぞご活用ください。

 
 

エニアグラムとは

エニアグラム(Enneagram)の Ennea とは、ギリシャ語で「9」を意味し、Gram は同じく「描かれたもの」という意味です。
 
エニアグラムは、図のような9つの頂点を持つ多角形を、内接する円環で包み込んだ独特の図形のことを指して言います。しかしこの九芒星(9個の角を持つ星型多角形)は、一見して判るとおり、九角形(Nonagon)とも、一般的な星形とも違う独特の形状をしています。
 
この図形の作図は次のようにして行います。円周を先ず九等分し「9」を頂点にもってくるようにして、右回りに「1」~「8」までの数字を振ります。次に「3-6-9」を結んで円に内接する三角形を描き、残りを「1-4-2-8-5-7-1」の順に結びます。
 
ということで、この九芒星は、三角形と変形六角形を重ねた形となっています。この奇妙な形と、角に振られた数字に、実に神秘的な意味が隠されているのです。
 

図が持つ意味

先ず円環は、宇宙全体と、それが一つ(Oneness)であること、そして宇宙の永遠の循環を象徴しています。
 
その内側にあって、角を接した三角形は、そこから生まれる「三角形の法則」を表しています。すなわち、一者から陰陽二極が生じて三角形を作る。また逆に陰陽二極の和合から新しい何かが誕生する。これが「三角形の法則」です。この法則は万物の成り立ちを象徴しているのです。

次に変形六角形ですが、これは「オクターブの法則」から導き出された形です。「オクターブ」の原義は「8番目」という意味ですが、ドレミファソラシで1オクターブ上がるということから、「 オクターブの法則」というのは、実際には7階層の循環を説明しています。

さて、六角形なのになぜ「7」なのかと、疑問を持たれたことでしょう。そこで、電卓を用いて1/7を割り出してみてください。
 
0.142857142857…と表示されたでしょう。7で割った数というのは、7が素数であるために、7の倍数以外には割り切れずに、小数点が永遠に続くのです。では同様に、次の割り算をしてみてください。
 
1/7=0.142857142857…
2/7=0.285714285714…
3/7=0.428571428571…
4/7=0.571428571428…
5/7=0.714285714285…
6/7=0.857142857142…
7/7=1.0
 
何かにお気づきではないでしょうか? 同じ数字が、同じ並びで繰り返し出てきているでしょう。これを「循環小数」と言います。また、小数点一桁の数字を見れば、順番は違いますが、やはり「1、4、2、8、5、7」の数字が出現します。しかし、7/7=1ですから、この小数点は「0」となり、最後の数値が省かれているために6個となっているのです。

エニアグラムの循環
さてそこで、図に戻ってください。エニアグラムの六角形は、この循環小数である「1-4-2-8-5-7-1」の順に線が引かれているのです(7から1に戻ってまた循環する)。このことから、エニアグラムの変形六角形は、「オクターブの法則」の循環を象徴しているのです。

一方の「3-6-9」は、「3」「3²」「3³」と、「3」の倍数になっています。これはまさしく倍々ゲームで万物が形づくられていることを表しているのです。

さらに、図の数字を横のラインで見てください。頂点の「9」から始まって、右回りに掛け算をしていきます。
 
9×1=9
9×2=18
9×3=27
9×4=36
9×5=45
9×6=54
9×7=63
9×8=72
9×9=81
 
となり、各数字が横に並ぶのが解るはずです。
また、「1、4、2、8、5、7」の数字を全部足し上げると、「45」になり、これを数秘術でくくると「4+5」=9となるのです。

エニアグラムの成立とこれへの注目

George Ivanovich Gurdjieff

エニアグラムの成立は、今から2000年ほど前のアフガニスタン地方であったとされます。特殊な図象を基にしたこの術は、「スーフィー(Sufi)」と呼ばれる「神秘主義」のグループの中で代々受け継がれ、自己の意識をどう進化させていくかという課題のためのガイドとして用いられて来ました。しかしそれは、長らく外の世界に知られることがなかったのです。

時代が下って、20世紀初頭に ゲオルギー・グルジエフ(George Ivanovich Gurdjieff、1866 - 1949年)という神秘家が登場します。このグルジエフが、真理を求めて中央アジアなどを探検した際にこのエニアグラムに接し、持ち帰って西洋社会に紹介したことから、今日のように我々の知るところとなったのです。
 

性格診断法としての活用の道が開かれる

しかし、グルジエフがパリで最初にエニアグラムを披露した当初は、現在のような注目のされ方はしていませんでした。グルジエフの記述は難解だと言われていますが、私が見るところ、グルジエフは自分が得た感覚的な理解を上手く言葉に置き換えることが出来なかったように思います。

Oscar Ichazo,Claudio Naranjo

↑Oscar Ichazo ↓Claudio Naranjo 

ところが、グルジエフの死後に、二人の神秘家が登場して、今日に見られる「性格診断法」としての基礎を確立していくのです。

一人は、ボリビア出身の オスカー・イチャーソ(Oscar Ichazo、1931 - 2020年)です。イチャーソは「宇宙意識を高めるための技術体系、および目覚めた意識で世界と関係する方法」を伝授するための機関(後の「アリカ・スクール」)を設立し、1956年から南米各地の主要都市でグループ活動を行っていました。

もう一人は、チリ出身の精神科医 クラウディオ・ナランホ(Claudio Naranjo、1932 - 2019)です。ナランホは1960年代には幻覚剤の研究などを行っていたのですが、1970年の息子の死をきっかけにして「アリカ・スクール」に学び、以降は精神世界の活動に比重を置くようになって行きました。このような出逢いを経て、エニアグラムの今日のような活用法がしだいに確立されていったのです。

ところで、この二人の写真を見ていますと、二人はツイン・ソウルではなかったかと思うのです。ナランホはイチャーソよりも16ヶ月後の同日に誕生し、8ヶ月と2週間早く死亡していますが、ほぼ同時代を生きたことになります。そして何よりも、表情から受ける印象がそっくりです。また、共に南米出身でしたが、後に両者とも活動拠点をアメリカに移し生涯を終えました。

9つの性格

エニアグラムでは、人の性格を、以下のように大まかに9種類に分類します。
 
9つの性格
1.改革する人
  高潔で、理想が高い
2.助ける人
  思いやりがあり、人間関係を重視
3.達成する人
  適応力があり、成功志向
4.個性的な人
  ロマンチックで、内省的
5.調べる人
  強烈に思考する、理性的
6.忠実な人
  真剣に関わる、安全志向
7.熱中する人
  忙しく、生産的
8.挑戦する人
  パワフルで、掌握する
9.平和をもたらす人
  気楽で、控えめ

その人の性格を決定づける3つのセンター

9つの性格は、次のように導き出されています。先ず人間を、「本能」タイプ、「感情」タイプ、「思考」タイプの3つに分類します。エニアグラムでは、これを「センター(Center)」の傾向と呼んでいます。そして、これを三角形の頂点に配置し、その両脇に、隣りに位置した「センター」の影響度を加味した性格をさらに置いて、3×3の合計で9つに分類しているのです。

「本能」「感情」「思考」は、すべての人間が有する性格的要素ですが、エニアグラムでは、その人がどの傾向が最も優位にあるかということを見るのです。 そして、その人間に生まれながらにして備わったパーソナリティの基本的傾向は、一生涯を通じて変わらないとしています。

9つの性格がある意味

エニアグラムとチャクラ関係図
さて、この「センター(中枢)」なるものですが、この言葉にピンと来られた方も、もしかしたらおられるのではないでしょうか。
 
私が長年、解明できずに釈然としない思いを抱いていたのは、この「センター」の意味と位置づけに関してでした。これはある意味「エニアグラム」の核心部分と言ってよいものですが、肝心のその理由が明らかにされてはいないのです。

しかし、2021年の10月にハトホルからのヒントを頂いたことによって、その理由が判明しました。 「センター(中枢)」というのは、その名から連想されるように、ヨーガで言うところの「スシュムナー管」および「チャクラ」のことを指していたのです。

「スシュムナー管」というのは、「アストラル体(第4霊性密度体)」と呼ぶ目に見えない体の中心部を上下に通っている管のことで、身体の背骨の位置に重なるようにしてあります。この管に、図のように7つの「チャクラ」が朝顔の花のような形をしてくっついているのです。

この管は、別名「プラーナ管」とも呼ばれ、宇宙エネルギー(陽極)および大地のエネルギー(陰極)を上下より取り込んで各チャクラに配分する働きをしています。また、この二つのエネルギーが出合う中間では、中性のエネルギーが生じます。ということで、この3つのエネルギーが三角形の各頂点部分に配置されているのです。

ハトホルは、3つのエネルギーを、太陽の火、物質の火、プラーナの火と呼んでいました。太陽の火は天から来るエネルギーであり、要するに「光」です。物質の火は、別名クンダリニーですが、地のエネルギーであり、要するに「土」です。この両者が、天地の両方からスシュムナー管に流れ込んで、中央部で合体するのです。この時、「光」と「土」に光合成が起き、人体上に第3のエネルギーが生まれます(三角形の法則)。これがプラーナの火です。

そこで、上図のように、太陽の火(陽極)、物質の火(陰極)、プラーナの火(中性) の3つのエネルギーを三角形の頂点に配置し、その両脇に、各エネルギー中心から影響を受けるチャクラを配置したものが、エニアグラム図の9つの点となっているのです。三角形の頂点の両端は、その隣りのセンターの傾向もある程度持っているということを表しています。

各タイプが持つ囚われ

以上のようにして、エニアグラムで言う「センター」の傾向というものが、3つのエネルギーの強弱の傾向であったと理解すると、9つの性格というものが何から生じているのかが明らかになります。
 
要は「チャクラ」のバランスに歪みが生じているということ。そして、なぜ歪みがあるかと言えば、過去世より引きずって来た「カルマ」にその根本原因があるということが解って来るのです。

ということで、パーソナリティの各タイプは、そのタイプ特有の「囚われ」の傾向を示します。しかしこれは、逆に言えば、そのタイプが解消すべき「カルマ」の課題というものを示してくれているのです。

各タイプの好調の時と不調の時

エニアグラムの循環
その人の「性格」というものは、善い方向に向けられていれば「利点」となるのですが、しばしば逆方向に向かう場合があります。これは、各々の性格が、そのタイプ特有の「囚われ」を持っているためです。
 
人間の意識というものは、ちょっとした刺激が原因で絶えず揺れ動きます。そうした時には、性格にもそれに応じた変化が生じるのです。この変化は、当該「チャクラ」へのエネルギーの流入と流出によって生じると解釈できます。
 
エニアグラムの図中にある「矢印」の方向は、その関係を表わしています。すなわち、心が安定状態にある時には、引きの矢印の元にある性格を吸引する傾向を示し、逆にストレス時には、矢印の向かう方向にある性格のネガティブな面に自己を投射する傾向を示すのです。

このことが解りますと、自身の性格上の善い点と、好ましくない点が、どんな時に生じているのかを把握できます。そうすれば、自分の今のストレスの状況を見て、ネガティブな性格の発露を事前に防止することができるようになるのです。

なお、これは現段階においては仮説ですが、「9-6-3-9」という矢印の循環と、「1-4-2-8-5-7-1」を結ぶ矢印の循環は、おそらく「チャクラ」を回るエネルギーの相互補完関係を表しているのではないかと考えられます。

霊性の向上を目的としたエニアグラムの活用

さて、以上までは、イチャーソとナランホが、エニアグラムの中に見い出した「性格診断法」としての活用技法です。これだけでも画期的な成果と言えるのですが、しかしその後もこの技法は成長を続け、 ドン・リチャード・リソ(Don Richard Riso、1946 - 2012年)ラス・ハドソン(Russ Hudson、1957 - )が、この図に新たな視点を追加しました。

Don Richard Riso,Russ Hudson

↑Don Richard Riso ↓Russ Hudson

これには複数あるのですが、中でも「レベル」という指標を見い出したことは、エニアグラムに秘められた意義をさらに前進させたと思います。イチャーソとナランホの段階では、性格特有の「囚われ」と、好調時(リラックスしている時)と不調時(ストレスが掛かっている時)の状態までは示されていたのですが、それを知った上で、どのようにして、また何のために性格の改善を図っていくかということがハッキリとは示されていませんでした。
 
しかし、リソとハドソンからなる進化版では、そこに「霊性の向上」を図るために、という目的意識がプラスされているのです。そのことが明確に謳われているわけではありません が、しかし内容を見れば明らかです。これによって、エニアグラムは「心理学」のレベルから「神理学」のレベルに進化したと言えるでしょう。

*このようなことを強く言い過ぎますと、既存の学会に属する人の中から必ず「正統ではない」「心理学として認められない」という非難をする人間が現れて来ます。

 
ところで、人の「性格」というものは変えられるのでしょうか? これには「変わらない」と言う人もいますし、「変えられる」と言う人もいます。リソとハドソンは、エニアグラムに「レベル」という指標を与えることによって、これに答えをもたらしました。すなわち、生来のパーソナリティが変わることはないが、そのパーソナリティの下で、霊性の「レベル」を向上させていくことは出来るというものです。

よく「あの人は、人が変わった」と言われることを耳にしたり目にしたりします。が、これは一見、性格が一変したように見えて、実際にはその人の霊性の「レベル」が変わった、ということだったのです。そうしますと、エニアグラムは、「性格」を改善するツールというよりも、むしろ「性格」を利用して霊性のレベルアップを図るツールとして活用できるということが判ったのです。

これが、冒頭で申し上げたように、パーソナリティの影響から生じる障害を乗り越えて、アセンションへと繋がるガイドになるであろうと言ったことの理由です。
 
リソとハドソンが示した「レベル」は9段階となっていますが、興味深いことに、これは仏教で言うところの 「九品(くほん)」と同じ分類法となっています。
 
レベル 1 (健全) 解放のレベル
レベル 2 (健全) 心理的能力のレベル
レベル 3 (健全) 社会的価値のレベル
------------------------------------------------------------
レベル 4 (通常) 不均衡/社会的役割のレベル
レベル 5 (通常) 対人統制のレベル
レベル 6 (通常) 過補償のレベル
------------------------------------------------------------
レベル 7 (不健全) 違反のレベル
レベル 8 (不健全) 執着と強迫のレベル
レベル 9 (不健全) 病理学的破壊性のレベル

*数字が少ないほどレベルが高い

 
全体との関係を示すと、右側の図のようになります。つまり、各レベルに、そのレベルに応じた「矢印」の関係というものが依然として存在するものの、そこでの体験を学習するなかで、少しずつ霊性を向上させていくことが出来る、ということです。ただし、それは意識して取り組まない限りは非常に難しい。逆に言うと、意識しない限り、人は自分の「性格」に一生涯振り回されながら生きていく、ということになってしまうのです。

リソとハドソンは、この他にも、「ウイング」や「本能型」といった新たな視点を追加しました。このため、全体構造を把握するのが、イチャーソとナランホが示した以前のモデルよりは難しくなっており、読みこなすためにはかなりの知力を必要とします。

けれども、内容はより精緻さを増しており、真剣に取り組めば、心をめぐる問題の多くに対し適切な解決策を見い出せることでしょう。また、自分のタイプのことだけではなく、9つのタイプすべてについて精通すれば、その人は有能なカウンセラーとなって多くの人を助けてあげることが出来るでしょう。

エニアグラムの権利に関する問題と、それに対する見解

これまで見てきたように、「性格診断法」としてのエニアグラムは、徐々に開発されて精度を増してきたことから、その創作者が誰かということに関して争いが生じているようです。
 
先ず、図を世に出したのはグルジェフですが、そこに「性格診断法」の可能性を最初に見い出したのはイチャーソでした。ナランホは、イチャーソが運営していたアリカ・スクールに学んだ後、これを独自に発展させアメリカの若い学生たちに教えます。その中から、何人もの次世代研究者が登場して来るのです。その一人がリソで、リソは後にマインドフルネスの研究者であったハドソンを引き込んで、エニアグラムをさらにパワーアップさせていきました。
 
このように、今日に見るエニアグラムの活用法は、時代とともに変化し発展して来たものであり、大局的に見れば、それは連続的な進化だと言えるのです。ところが、俗に本家と元祖の争いに見るごとく、起源や正統性をめぐっては、巷では必ずと言っていいほど争いが生じるのです。こうしたことを聞くたびに、悲しい思いにさせられます。

そのようなことを言い出すのは、たいてい本人ではなく、後を継承した団体であることがほとんどです。ですが、そういった人たちは「インスピレーション」というものがどこからやって来るのかを知らないのです。

「インスピレーション」というのは、受けた人間の能力というよりも、その源泉からその人に与えられたものです。源泉のほうが、受け取る人間を選び、その時点でその人間が解釈できるだけの智恵を授けて来るのです。しかし受信者側は、その時代の環境的な制約や、本人の解釈レベルと表現レベルの問題があって、全部を伝えきれません。

そのため、「インスピレーション」の源泉は、受信者を代々繋げることで、少しずつバージョンアップを図っていくのです。ですから、これを大局的、また宇宙的に眺めた場合には、全体がチームとして動いていると言えるのです。しかし、こうしたことが一般の人々には理解できません。そこで、地上の論理を持ち込んで、所有権を主張したり、正統性をめぐって相争う事態となってしまうのです。
 
残念ですが、そうなってしまうのが人間であり、これまで延々とその間違いを繰り返して来ました。結局、自分自身の中に「インスピレーション」が沸くということがないから、確証が持てずに、代わりとなる「権威」や「お墨付き」や「盲目的信仰」に頼るようになってしまうのですね。

『虹の学校』では、「型」や「教え」といったことは一切主張しません。宇宙の掟は生々流転です。ものごとは移り変わっていくものであり、自分の考えによってどんどん進化させていけばよいと考えています。大切なものは自由と個性。エニアグラムは、まさにその進化をサポートしてくれるシステムでもあるのです。

エニアグラムを巡る歴史

  • 19世紀の終盤から20世紀初頭にかけて、ゲオルギイ・グルジエフが「真理の探求者たち(The Seekers of Truth)」というグループを結成して、中央アジアの奥地などへの探検を行う(この時に、エニアグラムに接したと思われる)
  • 1912年、グルジエフは遍歴の時代を終え、モスクワで小さなグループを指導するようになる
  • 1915年、のちに『奇跡を求めて』を刊行することになるピョートル・ウスペンスキー(1878 - 1947年)がグルジエフと出会う
  • 1919年、グルジエフはグルジアのトビリシに活動の拠点を移し、ムーヴメンツと呼ばれる神聖舞踏の初めての公演をする
  • 1949年、ウスペンスキーの『奇跡を求めて』がニューヨークで刊行される
  • 1968年、オスカー・イチャーソがチリにアリカ・スクールを設立。「性格診断法」としてのエニアグラムを教え始める
  • 1970年、クラウディオ・ナランホがイチャーソのセミナーに学ぶ
    やがて独自のエニアグラム・システムを開発し、カルフォルニア州のバークレー校、エサレン研究所、北米全土のイエズス会で教え始める
  • 1974年、イエズス会の神学生であったドン・リチャード・リソが、ナランホの講義に接する(リソはその後、イエズス会を退会)
  • 1990年、リソが『Understanding the Enneagram』を出版
    その後、マインドフルネスの専門家であるラス・ハドソンと提携し、最初の2作品の改訂版を含む、5冊のエニアグラム関連本を執筆
  • 1993年、リソとハドソンが独自のタイピングテストを開発

余談ですが、オスカー・イチャーソが最初に作ったシステムでは、性格タイプを全部で108パターンに分類したと言います。これは、9×12(3×4)の数に相当しますが、仏教でいうところの百八煩悩と同じ数であり、おそらく両者には何らかの関係性があるように思います。これは後の研究に譲ります。

 
 

グルジエフの著作に関する見解

最後に、グルジエフの著作に関する見解を述べておきたいと思います。この章の前半部分において、「エニアグラム」の成立と、それが「性格診断法」として使われるようになった経緯を書きました。それをお読みになって解るとおり、グルジエフはこの「エニアグラム」を、必ずしも「性格診断法」として世に出したわけではありませんでした。
 
グルジエフは、「エニアグラム」を用いれば、この世のあらゆる事象が説明できるとしていましたが、実際にそれを用いた事例はわずか一つしか示していません。しかもその説明も非常に解りにくいのです。ということで、グルジエフが実際に何を見い出していたのかが解らないまま、なお一層の神秘性をもって今日まで語られています。
 
しかし、私がこれまで見るところ、グルジエフは「三角形の法則」と「オクターブの法則」および「円環理論」を、この一つの図によって総合的に、また感覚的に把握することを狙っていたのではないかと思うのです。そのように考えますと、確かにこの「エニアグラム」は、「三角形の法則」と「オクターブの法則」および「円環理論」を同時に表現した、優れた図形であることには間違いありません。
 
けれども、法則の「理解」という観点からすると、私にはかえって解りにくくしているように思われるのです。普通、図版というものは、理解を助けるために用意されます。ところが「エニアグラム」は、複数の法則を同時に表現しているために、かえって理解を難しくしてしまっているように感じられるのです。
 
ショックとインターバル
特に「オクターブの法則」においては、グルジェフが「ショック」または「インターバル」 と呼んだ箇所が、ミ-ファの箇所では上手く合致するものの、次がシ-ドではなくソ-ラの位置に来るという欠陥が見られます。また、三角形の「9」には全音階のドを充てている理由も、もう一つ判然としません。

*ドレミファソラシの半音階部分に相当する箇所

 
このようなことから考えますと、「三角形の法則」「オクターブの法則」「円環(循環)理論」に関しては、それぞれを別に解説したほうが、遙かに理解しやすいものが提供できると私は思うのです。ということで、『虹の学校』では、これらについてはそれぞれ別のチャートを作って説明するようにしております。
 
以上のことから、「エニアグラム」に関しては、「性格診断法」としての用い方以上に深入りしてもあまり意味はないかなと、現時点では考えています。(あくまで現時点での見解です)
 
グルジエフは、かなりアーティスティックな表現と感覚を好んだ人のようであり、「エニアグラム」を基に考案した「Movements」と呼ぶ舞踏表現などにも果敢にチャレンジしています。後年、あまりにもそちらに傾倒を強めたために、神秘学への興味を深めたかったウスペンスキーと仲違いしてしまったほどです。このようなことから、文章表現にもそうした傾向が強く顕れ、話を理解しにくくしているように私には思われるのです。
 

▼ 下記動画は「Movements」の例

▼ 残されているグルジエフの映像